ビットコイン(BTC)は2月26日、2024年11月以来の最安値となる8万3500ドルまで下落した。

コイングラスのデータによると、この3日間での1万2820ドル分の下落により、レバレッジをかけたロングポジションで10億ドル以上が清算された。

アナリストは、世界的な景気後退への懸念がこの弱気ムードを引き起こしていると指摘しているが、デリバティブ市場の圧力や企業業績の低迷も、ビットコインを9万どる以下に押し下げる要因となっている。

米国の関税政策が投資家心理に影響

この売り圧力の1つは、トランプ米大統領がカナダおよびメキシコからの輸入品に対する関税を推進するとのニュースだ。

この発表を受け、投資家は安全資産として長期米国債へ資金を移動させた。安全資産とされる金(ゴールド)もこの影響を受けて2日間で2.2%下落し、2月24日には過去最高値の2956ドルから値を下げた。

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金価格(緑) とビットコイン価格 (青). Source: TradingView

ビットコインは、資金力のあるビッグテック企業とは異なり、配当を生み出すわけではない。そのため、SP500の方が、リスク資産というよりはリスクヘッジとして機能する傾向がある。FactSetのアナリスト、ジョン・バッターズ氏は、第4四半期のSP500企業の年次利益成長率が前年比16.9%と堅調に推移すると予測している。

一方で、ストラテジー(旧マイクロストラテジー)がビットコインの価格を10万ドルまで押し上げたとの指摘もある。しかし、同社が今後も資金調達を継続できる保証はない。ストラテジーの株価は過去7日間で19.4%下落しており、投資家は同社が3年間で420億ドルの資金調達を実現できるのか懐疑的な姿勢を示している。この不確実性が、ビットコインの価値維持に対する疑念を高めている。

AI関連のリスクが市場に影響

ビットコインが9万5000ドルへ回復するには、ポジティブな経済指標が必要とされている。しかし、人工知能(AI)大手のエヌビディアが2月26日に発表予定の四半期決算が市場に与える影響を懸念する声もある。米国の対中輸出規制や関税紛争が同社の業績に悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。さらに、AIバブルの懸念もリスク資産への投資意欲を低下させており、米国5年債利回りは2024年12月以来の最低水準にまで落ち込んでいる。

通常、国債への高い需要と金価格の急上昇は、市場の恐怖感を示す。特に、ファーサイドのデータによると、2月24日にはビットコイン上場投資信託(ETF)からの流出額が11億ドルを超え、投資家心理に大きな打撃を与えた。多くの投資家は、大手機関投資家がビットコインのボラティリティを管理し、不況時のヘッジ資産としての役割を果たすことを期待していたが、その信頼は大きく揺らいでいる。

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Spot US Bitcoin ETF daily net flows, USD. Source: CoinGlass

ビットコインのオプション満期が市場に与える影響

2月28日には、69億ドル相当のビットコイン月間オプションが満期を迎える。トレーダーの間では、これが価格下落の要因となる可能性が指摘されている。弱気派はこの状況を利用し、8万8000ドル以下で価格を抑え込もうとするだろう。例えば、37億ドル相当のコールオプションのうち、8万8000ドル以下で有効なものは6000万ドル未満にとどまっている。

そのため、弱気派にとっては、満期までにビットコイン価格を8万8000ドル以下に留める明確な動機がある。市場のリスクが高まる中、強気派には価格を押し上げるだけの勢いが不足している。

オプション満期後にビットコインが9万5000ドルを回復するのは難しい状況であり、短期的には強気派にとって不利な展開が続く可能性が高いだろう。

本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自身でリサーチを行って決定してください。